2025.04.28
近年、猛暑による熱中症リスクが高まる中、企業では屋内外を問わず適切な対策が不可欠となっています。
特に日本の夏は高温多湿で、熱中症の発生率が年々上昇しており、それに伴って救急搬送数や死亡数は増加傾向です。
そこで、企業には、従業員の安全を守るために、熱中症の予防と対応策を理解することが求められています。
この記事では、熱中症の原因や症状、予防法を詳しく解説するとともに、企業の具体的な取り組み事例も紹介します。
熱中症とは、高い気温や湿度の環境で身体が熱を持ち、身体が体温の上昇に対応できずに引き起こされる様々な症状のことです。
ここでは、熱中症の定義やメカニズム、主な原因、予防法について詳しく解説します。
熱中症は、体温調節機能が正常に働かないことで起きる健康障害の総称です。体内で生成される熱や外部からの熱が蓄積し、体温調節の限界を超えた場合に発症します。
本来人間には、平常時は体温が上がっても、皮膚温の上昇や汗を出すことによって熱を外へ逃がす働きがあります。
この体温調節機能が低下し、熱中症が発生するメカニズムは、以下のとおりです。
● 運動や労働による筋肉活動で、体内で作られる熱が増加
● 高温多湿の環境下では、汗の蒸発が妨げられて体温調節の働きが低下
● 大量の発汗による脱水状態が発生し、体内の水分と塩分が失われ、血液循環が悪化
誰でも起こるリスクがある熱中症は、軽度から重度まで様々な症状を引き起こし、最悪の場合、生命の危険も伴います。
重症度 | 現れる主な症状 |
---|---|
軽度 | めまいや立ちくらみ、筋肉痛など |
中度 | 頭痛や吐き気、倦怠感など |
重度 | 意識障害やけいれん、高体温など深刻な状態 |
特に高齢者や乳幼児は体温調節機能が低いため発症リスクが高く、慢性疾患を持つ人も要注意です。
年々、気候変動による猛暑の頻発で熱中症発症者は増加傾向であり、社会的問題として認識されています。企業においても、正しい熱中症対策と予防が非常に重要な課題といえるでしょう。
熱中症の発症は、「環境要因」「身体要因」「行動要因」の3つから引き起こされます。
環境要因として、屋内外で考えられるものは以下のとおりです。
屋外の要因 | 高温 | 気温が高いほど熱中症のリスクが増加する |
---|---|---|
高湿 | 湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、体温調節が困難になる | |
強い日差し | 直射日光や照り返しは体表面温度を上昇させる | |
風の弱さ | 風が弱いと体熱の放散が起こりにくい | |
屋内の要因 | 高温 | エアコンのない室内や締め切った部屋では室温が上昇し、危険度が増加する |
高湿 | 室内でも湿度が高いと体温調節が困難になる | |
風通しの悪さ | 換気が不十分な場所では熱がこもりやすくなる | |
放射熱 | 炉前や熱源の近くでは輻射熱により体温が上昇しやすくなる |
次に、身体要因として考えられるものは、以下のとおりです。
年齢 | 高齢者や子どもは体温調節機能が低いため、リスクが高い |
---|---|
健康状態 | 高血圧、糖尿病、心臓病などの慢性疾患は体温調節機能を乱す可能性がある |
その日の体調 | 睡眠不足や二日酔い、感染症などの体調不良により、熱中症のリスクが高まる |
栄養状態 | 低栄養(痩せすぎ、過度なダイエット)や肥満の方は、体温調整機能が乱れている |
暑さへの順化 | 体が暑さに慣れていない時期は特にリスクが高い |
3つ目の行動要因として考えられるものは、以下のとおりです。
重労働や運動 | 体内で多くの熱が発生し、熱中症のリスクが高まる |
---|---|
服装の選択 | 通気性の悪い服装は体熱の放散を妨げる |
水分摂取不足 | 定期的に水分摂取をしないと脱水状態になり、リスクが高まる |
長時間の屋外作業 | 屋外で長時間日光にさらされることでリスクが増加する |
このような要因が複合的に作用することで、熱中症リスクが高まると考えられます。
熱中症は、あらゆる環境で発生する可能性があります。
屋外では、高温や高湿、直射日光、風が弱いなどが発症の条件です。特に日本の夏は高温多湿が特徴であり、汗が抜けにくいため体内に熱がこもりやすくなります。
一方、屋内ではエアコンを使用しない部屋や通気性の悪い空間は、室温が上昇しやすい環境です。
屋内外で発生するリスクがある熱中症は、環境に応じた予防策を講じる必要があります。
屋外では、日光を遮る日よけを利用し、通気性の良い服装や帽子などで体温上昇を防ぐことが基本です。また、水分補給は喉の乾きを感じる前に行い、特に塩分を含む飲料等を摂取しましょう。
一方、屋内では適切な空調管理が重要です。 室温は28℃以下、湿度は70%以下を目安に、エアコンでの温度管理等に加えて、扇風機やサーキュレーターを活用して空気の流れを確保します。また、カーテンやブラインドで日射を遮り、室内の温度上昇を防ぐことも有効な手段のひとつです。
さらに、暑熱順化で体を暑さに慣らす方法もあります。暑さに慣れるまでは⼗分に休憩をとり、徐々に⾝体を慣らしていく方法です。
活動開始前の2週間程度、1日30分程度の軽い運動から始めることで、発汗機能や体温調節機能が向上し、効率的な体温調節が可能になります。
熱中症の症状は、その重症度によって軽度(Ⅰ度)、中度(Ⅱ度)、重度(Ⅲ度)の3段階に分類されます。
それぞれの違いや症状、対応方法を把握し、適切な予防や行動ができることが大切です。
軽度の熱中症では、めまいや立ちくらみといった「熱失神」や、筋肉のけいれんを伴う「こむら返り」、大量の発汗が主な症状です。この段階では、涼しい場所で安静にし、水分や塩分を補給することで改善が期待されます。
中度になると、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、脱力感などの「熱疲労」の症状が現れます。この場合は、すぐに病院へ搬送し、体温管理や点滴治療が必要です。
さらに重度では、意識障害やけいれん、40℃以上の高体温といった深刻な状態が生じ、肝臓や腎臓の機能が悪化することもあります。この「熱射病」の段階では、緊急搬送と集中治療が不可欠です。症状が進行するにつれ生命の危険性が高まるため、早期発見と適切な対応が重要になります。
重症度の判定は、意識がしっかりしているか、自分で水分が飲める状態かなどのポイントがあります。
また、熱中症が起きたときは、早期の医療機関の受診や、必ず誰かが付き添い状態を見守り、各段階で迅速かつ正しい対応を取るようにしましょう。
軽度の熱中症は、適切な初期対応により重症化を防ぐことが可能です。
主な症状としては、めまいや立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗が挙げられます。これらの症状が現れた場合、まずは直射日光を避け、風通しの良い日陰や空調の効いた室内など涼しい環境に移動することが重要です。
同時に、首筋や脇の下、足の付け根などを冷やし、体温を下げるように努めましょう。また、水分と塩分の補給も欠かせません。経口補水液やスポーツドリンク、食塩水を少しずつ摂取し、体内の電解質バランスを整えます。
さらに、体の熱を逃がしやすくするため、衣服のボタンやベルトなどを緩めることも大切です。
症状が徐々に改善している場合のみ、現場での応急処置と安静、見守りをするといった対応方法を取ります。
ただし、安静にしても症状が改善しない場合や水分が摂取できない状態の場合は、中度以上の熱中症の可能性を考慮し、速やかに医療機関を受診しましょう。
中度の熱中症は、軽度よりも症状が進行しており、迅速かつ慎重な対応が求められます。
主な症状として、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、脱力感が挙げられ、体温の上昇もみられます。これらの症状が現れた場合、まずは空調の効いた室内や日陰など涼しい環境へ速やかに移動させることが重要です。
その後、氷嚢や冷たいタオルを使用して首筋、脇の下、足の付け根といった冷却しやすい部位を重点的に冷やします。また、体熱の放散を促進するために、衣服を緩めたり脱がせたりすることも必要です。
意識がはっきりしている場合には、経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつ摂取させ、水分と塩分を補給します。
しかし、意識が低下している場合や症状が改善しない、あるいは症状が悪化する場合には、速やかに医療機関へ搬送する必要があります。
体温が40℃未満でも大量に汗をかいて脱水症状がみられる場合は、早急な医療処置が必要です。周囲の協力を得て適切な対応を取り、重症化を防ぎましょう。
重度の熱中症は生命の危険を伴う状態であり、意識障害、全身のけいれん、40℃以上の高体温、肝臓・腎臓機能の悪化といった症状が特徴です。また、脱水で汗をかけず、発汗が止まるという症状もみられます。
これらの兆候が確認された場合、直ちに119番通報して救急車を要請し、できるだけ早く体温を下げる応急処置を行います。
具体的には、衣服を脱がせた上で全身に水をかけ、扇風機やうちわで送風する「水道水散布法」を実施します。氷嚢や保冷剤で首筋・脇の下・足の付け根を重点的に冷やし、体温を1分でも早く下げることが重要です。
救急隊到着までの冷却処置が、生存率を左右する可能性があります。倒れた方の状態や意識の有無を確認しながら、救急隊が到着するまで冷却を中断せずに続けましょう。
ただし、反応や意識がなく、普段どおりの呼吸がない場合は、一次救命処置による心肺蘇生やAEDを用いた除細動などの応急手当を行います。
熱中症は、正しい対策と適切な処置を行えば、予防あるいは軽症で済みます。
発症予防として、以下の対策を積極的に取り入れましょう。
環境管理 | 室温28℃以下、湿度70%以下を目安に環境を整える |
---|---|
WBGT(暑さ指数)を活用し、熱中症のリスクを把握する | |
体調管理 | 十分な睡眠と栄養摂取で体調を整える |
既往症がある場合は、主治医に相談し、適切な対策を立てる | |
水分・塩分補給 | のどの渇きを感じる前に定期的に水分を摂取する |
大量に汗をかいた場合は、経口補水液などで塩分も補給する | |
適切な服装 | 通気性・吸湿性の良い素材を選ぶ |
冷却グッズや冷却服を使用する | |
帽子や日傘で直射日光を避ける | |
暑熱順化 | 徐々に暑さに体を慣らしていく |
2週間程度かけて、少しずつ運動時間や強度を上げる | |
周囲の人への配慮 | 熱中症のリスクが高い人には声をかける |
互いに体調を確認し合う習慣をつける |
重症化を防ぐためには、以下の対応が重要です。
● すぐに医療機関へ相談、または救急車を呼ぶ
● 涼しい場所へ移動する
● 体を冷やして体温を下げる
● 塩分や水分を補給する
周囲の人々と協力し、迅速な対応を心がけましょう。
熱中症を予防するためには、環境管理や個人の健康管理が重要です。特に、水分補給や適切な服装、暑さに慣れるための「暑熱順化」などの方法があります。職場では、作業環境の改善や従業員への教育が欠かせません。
これらの対策を具体的に紹介し、熱中症のリスクを抑える方法について説明します。
「【企業向け】夏以外にも起きる熱中症とは?!事前に予防法がわかる熱中症対策ガイド」の記事へ
熱中症予防において、適切な水分・塩分補給は重要です。人の身体は常に水分が必要であり、特に高温環境下では発汗によって大量の水分とミネラルが失われるため、意識的な補給が大切になります。
水分補給のタイミングとしては、のどの渇きを感じる前に、こまめに行うことが推奨されます。例えば、30分に1回、コップ1杯程度(200ml)の水分を摂取する習慣をつけると良いでしょう。
適切な飲み物としては、水、麦茶、スポーツドリンク、経口補水液などが挙げられます。水や麦茶は日常的な水分補給に適していますが、大量に汗をかく作業や運動を行う場合は、ナトリウムやカリウムなどの電解質を含むスポーツドリンクや経口補水液がおすすめです。
市販の製品であれば、100mg当たり0.1〜0.2gの⾷塩が含まれている飲料水を選びましょう。
ただし、アルコールやカフェインを多く含む飲料は利尿作用があるため、水分補給には適していません。また、⽔分を摂らず塩飴や塩分のタブレットだけを舐めた場合も、予防効果は期待できないので注意しましょう。
正しい水分と塩分の補給方法を理解し、実践することで、熱中症のリスクを大幅に軽減できます。
熱中症を予防するためには、暑さを避ける工夫が欠かせません。屋内では、エアコンなど空調を適切に利用し、室温を28℃以下、湿度を70%以下に保ちます。エアコンがない場合は、扇風機やサーキュレーターを活用し、空気の循環を促すことが重要です。
窓には遮光カーテンやブラインドを取り付け、直射日光を遮ることで、室温の上昇を抑えられます。また、照り返しが強い道路沿いの建物には打ち水もおすすめです。
屋外では、できるだけ直射日光を避けるように心がけましょう。帽子や日傘を使用し、頭部や顔への直射日光を遮ります。服装は、通気性の良い素材、ゆったりとした衣類を選ぶと良いでしょう。吸湿性や速乾性に優れた素材のインナーを着用することもおすすめです。
また、身体を暑さに慣らす「暑熱順化」も重要です。徐々に暑さに体を慣らしていくことで、発汗機能や体温調節機能を向上させる目的があります。
具体的には、30分のウォーキングや筋トレなどを週5回を目安に実施し、⽇常⽣活の中で、無理のない範囲で汗をかくようにします。数⽇から2週間ほど続けることで、徐々に身体を慣らしていく方法です。
特に、梅雨明けから本格的な夏を迎えるまでの期間に、積極的に暑熱順化を行うことが推奨されます。
職場は、熱中症が発生しやすい環境の一つです。特に、建設業や農業など屋外での作業が多い業種や、高温多湿な環境下での作業がある製造業などは、熱中症のリスクが高まります。
職場における熱中症対策としては、作業環境の改善が挙げられます。作業場所の温度や湿度を測定し、適切な空調設備や換気設備を導入することが重要です。また、作業時間や休憩時間を適切に管理し、こまめな水分補給を促します。従業員には、熱中症の症状や予防方法について十分な教育を行い、早期発見・早期対応を徹底する必要があります。
作業着についても、通気性や吸湿性に優れた素材を選び、作業員の負担を軽減することが重要です。また、作業中は、帽子やヘルメットを着用し、直射日光を避けるように指導することも大切です。冷却グッズや冷却服等の活用もおすすめです。
企業は、熱中症対策に関するガイドラインを作成し、全従業員に周知徹底することが有効です。定期的に安全衛生委員会を開催し、熱中症対策の進捗状況や課題を共有することも重要です。万が一、熱中症が発生した場合に備え、応急処置の方法や医療機関との連携体制を整備しておきましょう。
これらの対策を講じることで、職場における熱中症のリスクを大幅に軽減できます。
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特に建設業や製造業では、屋外作業や高温環境下での作業が多いため、熱中症リスクが高い業種です。企業が直面する熱中症対策の事例をまとめてみると、さまざまな業種で独自の効果的な対策が実施されています。
代表的な対策としては、まずWBGT(暑さ指数)を定期的に測定し、その数値を従業員に周知することで、熱中症リスクに対する意識を高めています。休憩時間を小分けにして頻繁に取ることで、体温を下げる機会を増やす取り組みも行われています。また、クーラー完備の休憩所やスポーツドリンク、塩分補給アイテムを常備し、水分・塩分補給を促進しています。
さらに、ファン付き作業服等の冷却服を支給することで、作業中の快適さを向上させています。健康管理面では、毎朝の体調チェックやクラウドシステムを活用した健康管理を行い、持病のある従業員には個別対応を講じています。
また、製造業では、作業時間の短縮や暑熱順化、服装の改善なども行っています。例えば、高炉周辺の高温環境に対応するため、作業中の巡視や水分・塩分摂取を徹底している事例もあります。
従業員の安全と健康を守るために、企業規模や業種に応じた柔軟な取り組みが重要です。
「【企業向け】即導入できる暑熱対策完全ガイド|規則改正で求められる職場の安全性やリスク対応を」の記事へ
気候変動の影響で熱中症リスクが高まる中、企業には従業員の安全を守る具体的な対策が求められています。
熱中症は、屋内外を問わず高温多湿環境や水分不足などがリスクを高めるため、環境管理と健康管理の両面からの対策が必須です。
特に職場では、WBGT(暑さ指数)の計測や暑熱順化の推進、適切な作業服の導入など、業種に応じた対策を導入しましょう。軽度の段階で早期対応すれば重症化を防げるため、初期症状の周知と迅速な応急処置も必要です。
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