2024.01.30
「お尻から太ももの裏にかけて痛みがある」「太ももの裏がビリビリする」。このような症状はもしかすると「坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)」かもしれません。坐骨神経痛の原因となる疾患はいくつかあり、それぞれの疾患に対する治療が必要です。
今回は坐骨神経痛を解説し、原因となる疾患や疾患別におすすめのストレッチをご紹介します。
坐骨神経痛とは、坐骨神経がある範囲に痛みやしびれが広がる症状のことを言います。つまり坐骨神経痛そのものは疾患名ではなく、頭痛や腹痛のように何らかの疾患が原因となって現れる症状のことです。
坐骨神経は腰から伸びる神経の枝が集まってできた神経の束で、骨盤からお尻を通り、膝の下まで続きます。膝の下からは、いくつかの神経に枝分かれして足先まで広がります。また、神経根は中枢神経系(脳から繋がっている脊柱管の中の神経:脊髄)から出る神経の最初の部分です。
そのため坐骨神経が腰の骨(腰椎:ようつい)やお尻の筋肉(梨状筋:りじょうきん)などを通る途中で圧迫されると、痛みやしびれの症状が現れます。
また、明確な原因がわからないのに坐骨神経が関連する部分に痛みが広がる場合にも「坐骨神経痛」と呼ぶこともあります。
坐骨神経痛の主な症状は、お尻から太ももの裏または外側にかけて広がる痛みです。ただし、障害される部分によっては膝の下に症状が出る場合もあります。
症状は原因となる疾患によって異なりますが、特定の動きをすると悪化します。神経の圧迫が重度になると、安静時にも痛みが出現することもあります。また、足の力が入りにくくなったり、排尿や排便の障害が生じたりするのも重度の坐骨神経痛の症状です。
坐骨神経痛の原因となるのは、腰や骨盤、足にかけて広がる坐骨神経を障害する疾患です。具体的には以下のような疾患があります。
ここでは、それぞれの疾患の特徴や症状を解説します。
背骨はブロックのような骨(椎骨:ついこつ)が積み重なってできており、腰にある椎骨を腰椎(ようつい)と言います。また、椎骨の円柱状の部分を椎体(ついたい)と言います。椎体と椎体の間には、衝撃を吸収するクッションの役割がある椎間板(ついかんばん)があります。
腰椎椎間板ヘルニアは腰椎にある椎間板に繰り返し負担がかかったり、強い衝撃があったりすると椎間板の中にあるゼリー状の髄核(ずいかく)が突き出て神経を圧迫する疾患です。腰から出る坐骨神経の根本部分が圧迫されると、坐骨神経痛として症状が現れます。
激しい運動や重い荷物を繰り返し持つ、中腰での作業などによる椎間板への負担が原因になります。そのため活動性の高い20代〜40代に多く見られるのが特徴です。また、遺伝や加齢による筋肉の衰えも影響しています。
前かがみになると椎間板に負担がかかるため、坐骨神経痛の症状がさらに悪化するのが特徴です。
上記のようなシーンで痛みがある場合は腰椎椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。また、症状が悪化すると足に力が入らなかったり、排泄の障害が起こったりします。
背骨には神経の通る管(脊柱管:せきちゅうかん)があり、背骨の変形やずれにより脊柱管が狭くなって神経を圧迫した状態を脊柱管狭窄症と呼びます。腰に生じた脊柱管狭窄症が腰部脊柱間狭窄症で坐骨神経の根本部分が圧迫されることで、坐骨神経痛を引き起こします。
腰部脊柱管狭窄症では、腰を反らすとお尻から足にかけての痛みやしびれが強まるのが特徴です。脊柱管は加齢により狭くなるため、60代〜80代にかけての高齢者に起こりやすい疾患です。しかし、脊柱管が狭くなる原因は、加齢以外でははっきりとはわかっていません。
坐骨神経痛の症状の他に神経性間欠跛行(しんけいせいかんけつはこう)が起こる場合もあります。神経性間欠跛行はしばらく歩くと痛みやしびれが現れて歩くのが困難になりますが、数分間休憩すると再び歩けるようになる症状が特徴です。
体を後ろに反らせると脊柱管がさらに狭くなるため症状が悪化します。
上記のような行動を行うと、痛みが出る、痛みが強くなっている場合は腰部脊柱管狭窄症の可能性があります。
腰部脊柱管狭窄症で見られる神経間欠跛行は、前かがみになって休憩すると神経の圧迫が減り、症状が緩和されます。他にも、自転車の運転や靴下を履く動作、カートを利用しての買い物などは自然に前かがみになるためスムーズに行なえます。
成長期に無理な運動をして背骨の後ろ側にある椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分が疲労骨折を起こし、分離した状態を腰椎分離症と呼びます。また、分離した背骨の前側(椎体:ついたい)がずれてしまった状態を腰椎分離すべり症と呼びます。
分離した骨が神経を圧迫して坐骨神経痛の症状が出るのが特徴です。体を後ろに反らすと神経の圧迫を強めるため症状が悪化します。
坐骨神経は骨盤から足へと伸びていて、骨盤の出口の部分には梨状筋と呼ばれる筋肉で作られたトンネルのような部分を通過します。スポーツや長時間の座り姿勢などで梨状筋に負担がかかって硬くなると、坐骨神経を圧迫します。これが梨状筋症候群です。
坐骨神経痛が主な症状で、スポーツをしたり、長時間座ったりすることで症状が悪化します。立って内股にするように足をひねる動作(内旋:ないせん)は梨状筋を緊張させ、坐骨神経の圧迫を強めるため症状が悪化します。
お尻や足に広がる痛みやしびれの他に、上記の疾患の特徴に思い当たる場合は早めに整形外科などの医療機関を受診しましょう。
原因となる疾患別に日常生活での注意点をご紹介します。日頃から意識して生活し、坐骨神経にかかる負担を減らしましょう。
腰椎椎間板ヘルニアは椎間板へ繰り返し負担がかかることで生じるため、普段の生活で椎間板への負担を減らす工夫が必要です。
例えば、長時間の運転やデスクワークを行う時、中腰などの無理な姿勢を続ける時は、休憩を挟んだり、姿勢を変えたりしましょう。
腰を反らすような動きはできるだけ避けます。また、腰椎椎間板ヘルニアと同様に、腰に負担のかかる動きをできるだけしないように心がけましょう。
例えば、床にあるものを持ち上げる時に、腰をかがめて持ち上げるのではなく、足を曲げてしゃがんだ状態からものを体の近くに抱えて持ち上げるようにすると腰への負担が軽減されます。
成長期に起こりやすい疾患のため、この時期に引き起こした場合は過度な運動を控えたり、日頃から体の柔軟性を保つストレッチをしたりすることが大切です。
梨状筋の硬さが原因となるため、足の付け根である股関節のストレッチを行うことが大切です。可能であれば梨状筋を意識したストレッチも行いましょう。
坐骨神経痛を引き起こす疾患ごとにおすすめのストレッチ方法です。坐骨神経痛の原因となる疾患は自己判断せずに、整形外科などの医療機関を受診しましょう。
椎間板への負担を減らすために、硬くなった腰回りの筋肉ほぐすストレッチと体幹を安定させるトレーニングを行います。ここでは腰を反らすストレッチを紹介します。
前かがみの姿勢をすることで椎間板の負担が増えます。立った状態で腰を反らすストレッチでも椎間板の負担を減らすことができるので、日常生活で取り入れましょう。
脊柱管狭窄症では、腰をそりすぎないような姿勢を保つために、腰をまるめるストレッチがおすすめです。
反動をつけずに、呼吸をしながらゆっくりと行います。
腰椎分離すべり症では、腰の反りを減らすため太ももの前にある筋肉を柔軟にするストレッチをします。
足を後ろに反らす時に、腰も反ってしまうことがあるので注意しましょう。
梨状筋症候群を予防するには、梨状筋をストレッチすることが大切です。
お尻が伸ばされているのを感じながら行いましょう。
ストレッチをしていて痛みやしびれが強まるようであれば、すぐに中止しましょう。ストレッチは、筋肉が伸ばされている感じがするくらいがベストです。痛みが出るまでは行わないように注意しましょう。
ストレッチをしている間は、呼吸を止めないようにします。秒数を声に出しながら行うと呼吸が自然にできるのでおすすめです。
また、ストレッチは反動を利用する方法もありますが、けがのリスクが高まるため専門家による指導が必要です。今回のストレッチでは反動はつけずにゆっくりと行いましょう。
坐骨神経痛は現れる範囲が広く、さまざまな疾患が原因となります。「足が痛いから」「しびれているから」といって、自己判断で治療をすると症状が悪化する可能性が高くなります。それぞれの疾患の特徴に思い当たる場合は、まずは整形外科などの医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
日常生活で腰にかかる負担を減らす方法は、坐骨神経痛の予防には大切です。また仕事などで腰に負担のかかる動作をする場合はサポーターで腰への負担を抑制することも可能です。ストレッチとともに普段から意識して、痛みやしびれのない健康な生活を送りましょう。
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シグマックス・MEDIAID事務局
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※MEDIAIDは日本シグマックスのブランドです。
※1:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2023年度メーカー出荷額ベース
※2:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2020~2023年度メーカー出荷枚数ベース