『ぎっくり腰』の対処法は?原因と予防のためのストレッチ方法

2024.01.26 最終更新日: 2024.01.30

「突然、腰が痛くなって動けなくなった」「かがむと急に腰が痛くなって元に戻れない…」。このような症状はもしかするとぎっくり腰かもしれません。

突然、電気が走るような激しい腰痛に襲われるぎっくり腰ですが、あまりの痛さや急な出来事に大けがをしたのではないかと不安になる方もいるでしょう。そのような不安を解消するために、ぎっくり腰の症状や原因を解説し、ぎっくり腰の対処法、予防法などをご紹介します。ぎっくり腰になっても焦らず対応できるように参考にしてください。

ぎっくり腰とは

ぎっくり腰は疾患名ではなく、急に起こった強い腰の痛みのことを指します。「急性腰痛」とも呼ばれ、腰の痛みが長く続く状態の「慢性腰痛」と区別されます。

腰の構造

ぎっくり腰についての理解を深めるために、腰の構造から見ていきましょう。

背骨は、椎骨(ついこつ)と呼ばれるブロックのような骨が積み重なってできています。腰にある5つの椎骨が腰椎(ようつい)です。

腰椎は重なり合う部分で関節を作り、腰を曲げたり、伸ばしたりといった運動を可能にします。運動は筋肉の働きによって起こり、腰の部分は背筋に覆われています。

腰椎の関節を安定させて保護するのが、靭帯(じんたい)や椎間板(ついかんばん)です。靭帯は腰椎が動きすぎるのを防ぎます。

椎間板は椎骨と椎骨の間にあり、腰椎にかかる衝撃を吸収するクッションのような役割の組織です。

これらの腰の関節や筋肉、靭帯、椎間板などの組織に負担が積み重なったり、損傷が生じたりすることで突然の痛みを伴うのがぎっくり腰です。また、なんらかの病気が原因で起こるケースもあります。

ぎっくり腰の原因と症状

ぎっくり腰は特定の原因で起こるわけではなく、それぞれに原因が異なります。基本的には腰椎の関節やまわりにある筋肉、靭帯、椎間板などの組織に起こる損傷がぎっくり腰の原因です。

損傷は筋肉の疲労や姿勢の歪み、急に無理な動きをすることなどで起こります。ぎっくり腰のきっかけになりやすい動作は下記のようなものがあります。

  •  重い荷物をかかえる
  •  前かがみの姿勢から起き上がる時
  •  腰をひねる時
  •  くしゃみをした時

日頃から腰への負担がかかっている状態で、これらの動作が引き金となり症状が現れます。

また、ぎっくり腰は腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばん)や腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)といった腰の疾患の症状の1つでもあります。さらに、がんの転移や感染症、骨折といった重大な疾患の症状として腰痛が現れる場合もあります。

ぎっくり腰の症状は突然発症する腰の痛みですが、原因となっている疾患によって足のしびれや力が抜けるような症状が合併する場合もあります。

しびれがある場合は坐骨神経痛の症状の可能性があります。坐骨神経痛については、下記の記事で解説しています。また、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の解説もあるので参考にしてください。

ぎっくり腰になったらどうする?

ぎっくり腰は突然の痛みが生じるため「どうしたらいいの?」と焦ってしまう方も多いのではないでしょうか。そこで、ぎっくり腰になった場合の対応方法をご紹介します。

安静にする

ぎっくり腰になったら体を無理に動かさず、楽な姿勢で安静にしましょう。例えば、横向きに寝て、体を少し丸めて膝を曲げた姿勢をしてみましょう。

また、ゆっくりと深呼吸をすると筋肉がほぐれやすくなります。楽な姿勢で深呼吸をして、できるだけリラックスした状態で休みましょう。

腰を冷やす

ぎっくり腰は組織の炎症が悪化してすぐの状態です。いわゆるけがをした直後の急性期(きゅうせいき)にあたるので、患部を氷枕などで冷やしましょう。

痛みが出てすぐの場合は、温めることで炎症が悪化する可能性があります。患部を温めるのは避けましょう。

急性腰痛、慢性腰痛の対処法についてはこちらの記事で解説しています。

腰まわりの動きを抑制する

痛めている腰の組織にかかる負担を少しでも減らすために、コルセットやサポーターの着用もおすすめです。コルセットやサポーターは背骨の動きを減らしたり、筋肉の働きを補助したりするため、組織を無理に働かせない作用があります。

ぎっくり腰で病院に行く目安

ぎっくり腰になって安静にして痛みが落ち着いたら、整形外科などの医療機関を受診しましょう。腰痛の原因となっている疾患が潜んでいる可能性があるかもしれません。

また、腰痛に加えて以下のような特徴がある場合は、重篤な疾患が原因となっている可能性があります。

重篤な疾患が原因となっている場合の特徴
  •  20歳以下または55歳以上
  •  時間や活動に関係のない腰痛がある
  •  胸の痛みがある
  •  がんやステロイドによる治療、HIV感染の経験がある
  •  栄養不良(栄養不足による低栄養状態)
  •  体重が減少した
  •  広い範囲の神経症状がある
  •  背骨が曲がったり、ねじれたりしている
  •  発熱がある

このような症状は「レッドフラッグサイン」と言って、腫瘍や骨折、感染などさまざまな疾患の症状として腰痛が現れているサインです。「痛みが軽くなったから」と言って、腰痛を放置するのはやめて、早めに整形外科などの医療機関を受診しましょう。

ぎっくり腰を予防するストレッチ

ぎっくり腰は、腰の筋肉の疲労や悪い姿勢を続けることが原因となります。そのためストレッチで筋肉の疲労を取り除いたり、良い姿勢を保つ柔軟性を確保したりすることが大切です。

ここでは、ぎっくり腰の予防におすすめのストレッチを2つご紹介します。自宅で簡単にできるので、血流が良く体がほぐれやすい風呂上がりなどの空いた時間に実践しましょう。

腰をそらすストレッチ

デスクワークや家事などで前かがみの姿勢を取ることが多い方におすすめのストレッチです。

  1. 足を肩幅に広げて立ち、両手を骨盤の後ろに当てる
  2. お腹が突き出るように力を入れながら両手で骨盤を押して、腰をそらす
  3. できるだけそらした状態で3秒キープ
  4. ゆっくり元の姿勢に戻る。2〜3回繰り返す

腰をそらすタイミングでゆっくり息を吐きながら行うと力が抜けやすいです。

腰を曲げるストレッチ

立ち仕事が多い方や妊娠中の女性など、反り腰になりやすい方におすすめのストレッチです。

  1. 足を肩幅よりやや広めにして椅子に座る
  2. 息を吐きながらゆっくり体を前に倒す
  3. できるだけ前に倒して背中を丸めた状態で3秒キープする
  4. ゆっくり元の姿勢に戻る。2〜3回繰り返す

上記のストレッチを繰り返すことで、徐々に腰が軽くなる感覚が得られることが理想的です。ストレッチで腰が痛くなる場合はすぐに中止しましょう。

反り腰が気になる方はこちらの記事をチェックしてください。

どのストレッチが自分の腰痛に効果があるのかが分からない場合は、自己判断で行わないようにしましょう。早めに整形外科などの医療機関を受診して、医師や理学療法士などの専門家に相談しましょう。

再発を予防する日常生活の過ごし方

ぎっくり腰の予防で大切なのは日頃から腰への負担を減らすことです。再発予防に必要な日常生活を過ごすポイントをご紹介します。

中腰の作業や重いものを何度もかかえるのを控える

中腰の作業や重いものを持つ動作は腰の筋肉や椎間板に大きな負担がかかるので、できるだけ避けましょう。重いものを持つ場合は、腰を曲げるのではなく膝を曲げて、ものに体を近づけてから持ち上げるようにすると腰への負担が軽減されます。

長時間同じ姿勢を取らない

長い時間、同じ姿勢を取ると筋肉が常に緊張した状態になってしまい疲労が蓄積します。蓄積した腰の疲労が急な腰痛として出現する場合があります。

座る姿勢や立つ姿勢、どちらの場合でも同じ姿勢を取り続けるのはよくありません。定期的に体を動かす意識を持ちましょう。

ストレッチや適度な運動をする

腰周辺の筋力や柔軟性が不足すると、腰への負担がかかりやすくなります。ストレッチや適度な運動を継続して、腰への負担のかかりにくい状態を意識しましょう。

日頃から腰に負担のかからない姿勢に気を付ける

デスクワークやスマホの操作などで背中が丸くなるような姿勢を続けていると腰への負担が強まります。座る姿勢は、腰を適度にそらして骨盤がまっすぐ立つような姿勢になるように腰にクッションなどを入れましょう。

正しい立ち姿勢は、お腹を引っ込めて、あごを少し引いた姿勢です。正しい姿勢の確認方法は、壁に背中と踵(かかと)が付くように立ち、腰と壁の間に手のひらが通る程度にお腹を引っ込めるよう意識しましょう。

柔らかいベッドやソファーの使用を控える

極端に柔らかいベッドやソファーは座り心地が良いかもしれませんが、腰に対しては負担がかかりやすいです。体が沈み込むようなベッドで寝ると、体がくの字に曲がってしまい腰に負担が集中します。適度な固さのあるベッドやソファーを選びましょう。

まとめ

ぎっくり腰は安静にしていれば治る場合もあれば、すぐに整形外科などの医療機関での対応が必要な場合もあります。そのため、ぎっくり腰の症状が出たあと、動けるようになったら整形外科などの医療機関を受診しましょう。

ぎっくり腰は腰への負担が重なってしまうことが原因となるため、日頃の生活で腰に負担がかからないような工夫を続けることが大切です。ストレッチはもちろん、運動により筋肉を付けることも腰痛予防につながります。また、腰に痛みがあっても腰に負担がかかる仕事や作業をしなければならない場合は、サポーターで腰への負担を軽減してあげると安心して作業をすることができます。

健康で生き生きとした生活を送るために、日頃から腰をいたわる生活を心がけましょう。

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※2:㈱日本能率協会総合研究所調べ。2020~2023年度メーカー出荷枚数ベース

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